アスペルガーと共に暮らす妻達が心身ともに病んでいくカサンドラ症候群。
一括りにカサンドラと言っても、パートナーが同じ人なのにその段階によって心の状態が結構違います。
どの段階でも、別の角度からの苦しみや絶望が襲ってきてしんどいんですけどね…
この「段階」についてはみんなたどる道は様々だと思うし、順番も前後するでしょう。色々な意見がありますが、この記事はあくまで私の考えをまとめます。
果たしてカサンドラの行きつく場所はどこなのでしょうか?この苦しみに出口はあるのか・・・?
第一期、違和感モヤモヤ期
最初はアスペルガーなんていう障害があること自体、知らないですからね。
出会って最初、もしくは付き合って最初の頃、なんだこの違和感?ってなるんです。
まずは小さなことから。
映画見ても全然トンチンカンな感想。
名前を呼ぶまで聞いてなかったり、呼んでも返事がなかったり。
一緒に語れなかったり、自分の意思が無かったり、突然失礼な事言ってきたり、変なこだわりがあったり…
アスペルガー本人はまだ必死に頑張ってるんだけど漏れてきてしまう違和感に気付いてくる。
最初は定型発達の考え方の中であれこれ理由をつけて必死に自分(私たち)の中で
「こう思ったからこうしたのかな?」とか
「こういう言葉は実は彼の中ではこういう背景があるのかな?」などと納得しようとします。
この段階で「この人とは価値観が違う!」と思い離れる・別れる人もいるでしょう。
しかし、この期をモヤモヤしながらも乗り越えアスペルガーと一緒にいる人は、大抵もともと変わり者が好きなタイプか、情に流されやすくて別れられないタイプだと思います。
ちなみに私は両方当てはまります;
第二期、理解できない伝わらない…イライラ訴え爆発期
勝手に変な〇〇期みたいな名前つけてごめんなさい(笑)
それでも付き合いを続けていたり、結婚の最初の頃ではもう、違和感とかモヤモヤどころでは収まらないやつに発展していきます。
どうしてこんな酷いことするの!
なんでこんなあり得ないこと言うの!
どうして人の気持ちがわからないの!
なんでそんなに心が冷たいの!
酷すぎるよ!
なんて最低な性格なのよ~~!!!
・・・と、毎回の会話や行動でイライラし、その不満を訴え、ぶつけ、喧嘩し、またこの思いが全然相手に伝わらずに虚しくて悲しくて泣きまくる日々を送ります。
そして、友達や両親に相談しても、あまり理解してもらえず、愚痴りすぎてウンザリされ、どんどん孤独になっていきます。
私はこの時期がとても長く辛かったです。
怒りで身が焼かれると思ったほどでした。
なんとか夫の性格を直してやろうと必死に頑張っていました。
人は話せばわかると思っていたし、心から伝えれば伝わらないことなんてないんだと信じていたので一生懸命訴えていました。
結婚して1年位は、ここにいたような気がします。
第三期、絶望愛情剥奪期
始めの頃は、違和感やイライラがあってもまだ彼らのよく見せようと頑張っているスイッチがオンになっているので魅力的な部分も沢山あり、まだ乗り越えられるのです。
しかしあなたが家庭に入ってしばらくした頃、あるいはもう俺の物状態の彼女になったりすると、アスペルガーの頑張るスイッチもオフになり、第三期に突入します。
この第三期、絶望愛情剥奪期が言葉に出来ないほど辛い…
こんな絶望味わったことが無いんじゃないか?と思うほど毎日泣きまくる日々になります。
苦しみのキャパオーバーで、夫の記憶だけ無くなるようになったのもこの頃からです。
どんなに訴えても全く響かない。暖簾に腕押しとはまさにこのこと。
嫌だ、やめて欲しいと毎日言っても全然聞いてもらえない。聞く耳を持っていない。
あり得ない言動、暴言、嘘、言い訳・・・
そして家族や子供が病気になった時、全く心配してもらえないで冷たい態度。めんどくさい態度。
その度に深く傷ついて泣いて、苦しくて泣いて、絶望して泣いて、泣いて、泣いて、、、思うんです。
ねぇ、私のこと愛してないよね?
その言葉、私を苦しめようとして言ってるよね?
口で言ってる事と、実際の行動が全然伴ってないじゃん。
配偶者に助けてもらえないどころか攻撃されるんだよ?
悩んでても相談もできないし。私に興味すらないし。
人としての普通の話をしてるだけなのに、普通を押し付けないでくれとか
俺を否定するのか!っていつも怒っちゃうし。
私、どんどん自己肯定感が下がって行っちゃって、おかしくなりそうだよ。
幸せになろうって約束したのに、どうしてこんな酷い事するの?
そして悟ります。
もう、この人は訴えても全然伝わらない。無理なんだ。
一生を共に生きようと約束した相手にこんな扱い受けるなんて、自分が哀れすぎる。
このままずーっとこうやって耐え続ける人生なのかな…って本当に心底落ち込む時期なのです。
そして、周りの人からも「男なんてそんなもんだよ!」とか言われて全然違うのに、もう周りに訴えることさえ虚しくなってやめるようになる。どんどん独りぼっちになる悲しい第三期。
第四期、データ収集・研究からの理解、そして再び最大絶望期
何回絶望来るんだよ!って思うんですけど、基本何度も絶望してるのでどうしても命名がこうなってしまいました。
なぜ、夫はこんなにあり得ない態度をするんだろう?
この言いようのない違和感や理解できない言動を調べるようになるわけです。
そしてここにきてやっとたどり着く、「アスペルガー」という言葉。
アスペルガーを知らない妻が、「あの人もしかしたらアスペルガーなのかも?」と思うまでには、とんでもない苦しみを経験してきた過去があるということです。(最近では結構知られるようになってきたのでこの段階の前に知るケースもあるでしょうが。)
アスペルガーについての記事を目にしたり、テレビでその情報を知った時、もうこれ完全にあの人の事だ!!!とあまりにも当てはまりすぎてビックリするのです。
目からうろこ、もうこれまでの疑問や謎が、ガラガラと音を立てて崩れ、一気に合点がいくというか。
アスペルガーというのは先天的な脳の機能障害であり、病気ではない事。性格ではない事。悪意があるわけではないこと。
やろうと思っても出来ない事があること。
彼らにはこんな特性があって、こんな傾向があって、こういう所は得意で、こんなところは苦手で…
ってアスペルガーの特性の知識と、それに対する対策を情報として鬼のように集めまくる時期。
自分が悪いわけではなかったんだと自己肯定感が少し復活します。
なるほど!そうだったのか!!!
だから今までこんなわけのわからない言動をしていたんだな…って理解するようになる。
障害だから仕方なかったんだって少し相手をわかってあげられた気がする。
でも、それと同時に絶対に治ることはないんだっていう別の意味での絶望が再び襲ってくるのです。
この時期になると、アスペルガーに対する知識も増え、頭で理解することはできるんです。
でも、日々アスペルガー夫から受ける苦しみからは逃れられない。
なので色々考え方を変えてみたり、やり方を工夫したり、特性を理解しつつ共にちょうどよく生活できる方法を模索・研究します。
しかしどんなに知識を得ても相変わらず自分は独りぼっちで。
更にこれまでの徹底抗戦により「敵認定」されちゃってたりすると、常に攻撃対象にされて苦しむ。
相手の気持ちを考えられる定型発達は、
アスペルガーだって好きでなってるわけじゃないんだ。脳の障害で人の気持ちがわからないんだ!
ってこれまたアスペルガーの気持ちになって理解して苦しんでしまう。
自分がボッコボコにやられて傷ついているのに、相手の苦しみを考えてしまって怒りのぶつけ場所を失うことに。
実際には怒りを相手にぶつけつつもなんか虚しくて、頭と心が分裂するような行き場のないモヤモヤが生まれる。
※本当の所、アスペルガーは相手の気持ちがわからなくて苦しいという感情よりは、自分の事にしか興味がなく人の感情を考える余地がない気がするので、定型発達が勝手に想像しているような苦しみは感じていないと思われるのですが…(笑)
第五期、全ての攻撃から自分を守るため…無の境地期
アスペルガーの知識もあり、自分とアスペルガーとの間に見えない大きな壁があって、
心に触れること・気持ちが伝わるなんてことは絶対にないんだ
と悟った先に、無の境地が待っています。
どんなにカサンドラ妻が知識上で理解したとしても、彼らが変わることは無いんです。
変わると見せかけても、何度となく同じようなやり取りを繰り返します。(アスペルガーの約束がその場しのぎなのはこちらの記事から)
アスペルガー夫が自分をアスペルガーだと認識していたり、実際に認定を受けている場合は「俺は障がい者なんだから定型発達のお前が変われよ」と開き直ってるパターンもある位で。
そして、感情が動くことで苦しむ事を悟ってきたカサンドラは、無の境地に入ります。
あえて、無になるのです。
自分の心を守るために。
そして日常的に繰り返される彼らからの心ない行動や言葉の攻撃から身を守るため、自分もアスペルガー夫に対してだけアスペルガー化するようになっていきます。
アスペルガーの人にだけ自分もアスペルガー化していってしまう理由はこちらに詳しくまとめてあります。
第六期、別の場所で楽しみを見つけるか真剣に離婚を考える卒業検討期
無の境地も長い事やってると、そんなロボット化していく自分の生活に嫌気がさしてきます。
アスペルガー夫といる時には全然笑わなくなり、いつも無表情で時間を避けながら過ごしている。
家庭では人間らしい感情を封印し、無の中でも主に不満とイライラを心で感じながら、でも諦めながら生きている。
ここからは二極化するか、同時進行で二つが動くかになると思うのですが…
①.家庭の中では無になっているけど、自分の心に折り合いをつけて上手に外で楽しい事を見つけ、趣味や好きな事、友達との関係の中で楽しみ笑い、心のバランスを保っていくパターン。
一方で、
②.この先一生無で居続けるであろう自分の虚しい人生に嫌気がさして離婚を考えるようになる。
子供の精神状態を考え離婚を考えるようになる。
というパターン。
個人的に思うのが、ここまでくるとあまりに多くの苦しみを経験し、知識を入れ、研究し、模索し、そこからの落胆、絶望、そして無・・・となっていってるのでもう自分の中である程度整理がついてくるんですよね。
諦めがついているというか。
①の人は、もうやり切った、もう十分自分は頑張った。だから家庭内で幸せを探すのは諦めて、生活費や子育てで助けてもらえる部分はあるし、そこは割り切って耐えよう。そして自分の楽しみを外で見つければいいじゃないか!と考えられる人。
②の人も、十分頑張った、これ以上ない程苦しんだ。だからもう思い残すことはない。自分の第二の人生を歩むためにも、子供の健康な心を取り戻すためにも、この人から離れよう!と考える人。
しかし経済的理由・子供の理由・その他にもいろんな理由で離れたいけど離れられない人も沢山います。やむを得ず、①と②の間を行ったり来たりして苦しみ続けているカサンドラも多いと思います。
アスペルガーの特性を知った今、もう嘆き悲しみ泣きまくる日々ではなくなっていたとしても、抱き続ける虚しさや哀しみや怒りは消えるものではないですからね。
一度家族になった人と簡単に割り切って別れることができるような人なら、最初からカサンドラにはなっていなかったでしょうし。
どんな選択も、正しいと思うんです。
このまま無になって一緒に生活するも良し。
外に楽しい趣味を見つけて心のバランスを取るのも良し。
離れて解放されるもまた良し。
私は私が幸せに生きる権利がある!と思え、自己肯定感がちゃんと復活してくるのもこの長い苦しみの末の第六期かな?と思います。
そして私は最近、①からの②に考えが移行してきています。
娘が小学校に上がるまでに何とか決断して覚悟を決めたいなと思っています。
共に生きる覚悟、別れる覚悟、どちらもカサンドラにとっては大きな覚悟です。
おわりに~やっぱり受け入れなさい・理解しなさい・許しなさいは違うと思う
ここまでカサンドラの様々な苦しみを綴ってきて思うのが、私のこのブログを始めたいと思ったきっかけになった医師やカウンセラーの言葉。
「相手はアスペルガーという発達障害なんだから、あなたが受け入れてあげないと。そんなにあれもこれも言わないで、許してあげなさい。そして、理解してあげなさい。」
この言葉はやはりカサンドラたちに使うべきではない、治療とは真逆の言葉のような気がします。
確かに、感情入れずに離れて見ればその通りなんです。
でも、これは全然解決策ではない!!!
この言葉を言われたカサンドラが、どれだけ奈落の底に突き落とされるか・・・
どの期でも、こんな言葉を言われてカサンドラが改善されるとは思えません。
余計、自分を押し殺し、自己肯定感を下げ、専門家にまで自分をわかってもらえないという哀しみでいっぱいになります。
それは徐々に時間をかけて苦しみ続けるうちに自分の中で受け入れて行ったり、許す部分が出てきたり、理解していったりするものであって、他人に言われちゃダメなやつだよな・・・と、改めて思いました。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
あくまで、私のたどったカサンドラの苦しみを段階別にしてまとめてみました。
順番が全然違ったとしても、カサンドラになっている方が同じように苦しんでいることに変わりはありません。
ご自宅の近くのあまりアスペルガーに知識のないお医者さんを訪ねてしまって、許せ受け入れろ理解しろと言われて帰ってきて打ちのめされているカサンドラさんに、この記事が届きますように。